私たちの強み

キャリアアップ事例 Case 01

Case 01ME系エンジニア 
小倉 剛 さんおぐら つよし
1989年キャリア入社 53歳

今ないものを生み出すのが設計エンジニアの価値。
いつも「他の方法はないか」と考え続けています。

これまでの
主なキャリア
1987年工学部航空工学科卒業 1989年メイテックフィルダーズ入社
自動車メーカーで内装部品などの設計補助を担当
1992年精密機器メーカーで二次元測定器の開発設計を担当 1996年自動車メーカーで現行車向けサスペンション開発を担当 1999年精密機器メーカーで二次元測定器の開発設計を担当 2000年自動車メーカーで現行車向けサスペンションを開発 2008年自動車メーカーで先行開発車向けサスペンションを開発

「他人とは違う発想をすることが、私というエンジニアの存在価値です」と語る小倉 剛さん。その発想力と人柄を見込まれて同じお客様先で長く契約いただき、約30年のキャリアで経験したのは2業種3社。そこでどのようなアイデアを考え出し、お客様に価値を提供してきたのか、語ってもらいました。

My Best Jobたわみやすいガラス板を平らに固定。ひらめきが定番技術を生む

私が社会に出たのは平成元年です。当時は「派遣エンジニアは即戦力、すぐ結果を出して当然だ」と、お客様もわれわれも今以上に思っていた時代でした。まだキャリアも技術もなかった当時の私は、「他人と違うアイデアを出さなければ自分の価値はない」と考え、元々創意工夫が好きだったこともあり、常に「今までにないやり方はないか」と考えていました。20代後半、私は精密機器メーカーで検査装置を設計していました。
台に置いた液晶パネルなどを、上部に設置したカメラを数ミクロンずつ動かしながら撮影し、その画像データを処理してパネルの不具合を検査する装置です。ほぼオーダーメイドで作られるため、さまざまな要求に対応する必要がありました。ある時「上から撮影するのでなく、下から照射して検査したい」というオーダーが来ました。台をガラスにすることになったのですが、ガラスはたわみやすく、検査に必要な数十ミクロン単位での平面度が出せません。既存のノウハウが使えないため、チーム全員で頭をひねりました。 考えては没、試しては失敗が続く中、私はガラスを2枚重ねて間にある素材を入れ、それによって平面度を調整する機構をひらめきました。それをお客様のリーダーに伝えた瞬間、リーダーが「ハッ!」とした表情を浮かべ、「これでいこう!」と即決。お客様にとっても期待を超えた製品が生まれ、その機構は今も会社のスタンダード技術になっていると聞きます。

これまでの経験の数々「違うアプローチはないか」と、常に考えている

同じような経験は、足かけ20年以上お世話になっている自動車メーカーでも、何度もありました。
現行車向けサスペンションの設計を担当していたとき、間もなく工場で量産開始という段階で「この設計では製造ラインに乗らない」ことが判明しました。こうしたトラブルは、現場ではありがちです。大がかりな設計変更は無理なので、通常は治具や工具を工夫することで対応します。そのときも、工具をどう変えればいいか、設計と生産技術のスタッフ全員が頭をひねりましたが、良い案が出ません。
そのとき私が、「工具そのものを考えるのでなく、工具の位置を変える構造にしたら作業ができるのでは?」とお客様のリーダーに提案しました。私が描いた図を見たリーダーは、あのガラス板のリーダーとまったく同じ「ハッ!」という表情を浮かべ、すぐにこの案の採用が決まりました。
自動車メーカーの設計部門は、皆さん本当に優秀なエンジニアの方々だらけで、知識量や論理的な思考力では私などかないません。だから私は、彼らと違うアプローチを常に考えます。私には知識がない代わりに、「こうしたらこうなるに決まっている」という先入観もありません。いつも自由にあれこれ考え、気が付くと夢の中で考えていたりします。自動車メーカーで長く契約いただいているのは、「そんな変わったやつが、一人くらい職場にいても面白い」と思ってくださっているからではないでしょうか。そんな期待に応え続けていきたいです。

エンジニアに必要なこと今ないものを考え出すことが、エンジニアの存在価値だ

現在、私は先行開発車向け、つまり未来の車のサスペンションを開発しています。これからは電気自動車の時代で、ますます既存の設計ノウハウが通用しなくなりつつあります。エンジンがモーターに置き換わるだけでなく、形状や性能、自動車のあり方そのものが変わろうとしていて、まさに斬新な発想が設計に求められる時代が到来しているのです。若いエンジニアには、いつも「自分の考えを大事にしろ」と言っています。
若いころって、怖いんですよ。失敗する怖さ、怒られる怖さ。けれど、その人にはその人にしかできない考え方があるものです。どんな考えも、100%間違っていることなどありません。私は、知識やノウハウは、そのうちすべてAIが担当してくれると予想しています。AIは過去のデータの延長線しか考えられませんから、これからのエンジニアに必要なのは、斬新なアイデア、オリジナルな発想です。「設計力を上げる」とは、「CADの使い方がうまくなる」ことではなく、自分だけの思考法、問題解決力を身に付けることです。既存の技術を焼き直す仕事ももちろんありますが、今ないものを考え出すのがエンジニア本来の仕事、存在価値だと、私は信じています。
子どもみたいですが、私の理想はエジソンなのです。残りのエンジニア人生で、何か世の中のためになる、社会的な価値のある画期的な仕事をして、お客様に貢献できたらうれしいですね。